2017年12月1日金曜日

ソフトウェアに関わる日本人に深圳行きをオススメする理由

この記事は ジーズアカデミー Advent Calendar 2017 の1日目です。

2017年11月中旬、中国の深圳で開催されたMaker Faire ShenZhen 2017に Morning Project Samurai というチームの一員として出展してきた。
その中で感じた伝えたいこと。

「日本に生きるすべての、ソフトウェアに関わる人には一度、深圳を訪れてもらいたい」

理由を以下に述べる。

まず深圳の「人類最速」と称される都市の発展ぶりについては、高須正和さんの書かれたこの記事を読んでもらうのが一番良いと思う。

人類史上最速で成長する都市「深セン」で何が起きているのか

要するに「若者が多数を占める」「ハードウェアの世界最大の製造拠点」という性格を持つ街だと理解していただきたい。
それは何を意味するか。
ハードウェア・ドリブンで人々の仕事も生活も、劇的な速度での変化を続けているということだ。

ここでいうハードウェアというのは、単体のデバイスという意味ではない。「あらゆるものがネットワークにつながって機能を果たすデバイスを基軸とした情報プラットフォーム」ということでご理解いただきたい。
見えるデバイスとして、わかりやすく筆頭に来るのはスマートフォンであるが、もちろんそれだけではない。
自動販売機、無人コンビニ、シェアサイクル。
まもなく自動運転の実用化も進んでいくだろう。
「見えるデバイス、所有するデバイス」だけでなく、「設置されているデバイス、見えないデバイス、借りるデバイス」の持つ、提供する、集める情報の活用こそが、ハードウェアによる革命の真骨頂だ。

ソフトウェアがそれ単体で社会の変革を興す時代はすでに終焉した。いまはハードウェアを日常に取り込み、その中でソフトウェアが機能することで、人々の生活が成り立ち、課題を解決する時代なのだ。

このような状況で、ソフトウェアだけを理解して作っていればいいというのは現実的でない。というよりも、自分のやりたいことのイメージを理解して、生き方に落とし込んでいくプロセスにおいて、ハードウェアを知っていることが不可避になっているというほうが正しいだろう。
ただし、それは、Raspberry Piを使って電子工作できる能力が必要とか、それだけを意味するのではないと思っている。
そういったツールキットを知り、それがハードウェア生態系のなかではどういう位置づけにあり、どんな使いみちがあるのかというのを「実感知」でもつことが重要と考える。

たとえばスマホ。ネットワークに繋がったもっとも代表的なデバイスであり、常に外に持ち出され、そのユーザの身体の一部のように使われることも日常茶飯事だ。そうなってくると、そこのうえでの課題解決を考えるうえでは、スマホが「持ち出されるハードウェア」だということへの適切な認識と、関連しての開発知識が必須になる。

圧倒的なスマホの普及が、むしろ世の中のハードウェアが生み出す価値の重視を劇的に早めたと言うべきなのだろう。そしてその多種、大量のスマホを生み出すエコシステムがある街。それが、深圳なのだ。

秋葉原の30倍といわれる広さを持つ電子街「華強北」

むろん、すべての人がエンジニアを目指さないといけないわけでもないし、すべてのソフトウェアエンジニアが「ハードウェアをつかったソリューションを編み出す力」を持っていなくていい。

ただしこれからのテクノロジーがつくっていく未来を予測して行動する見取り図となるような原体験が必要ではある。それはきっと、未来を良いようにつくっていきたいと感じるすべてのひとにとって。

であるならば、その社会における生活スタイルの爆速の変化を生で感じ、認識を多大に「再プログラミング」することが、マイルストーンとなる。それに適した場所は、中国、深圳。

深圳は成田空港からの直行便もあるし、香港経由で安く済ませることもできる。
Google FlightsやSkyscanner などで安い航空券を取ってしまえばOKだ。

どうせ時間がすぎるのを待っていても、深圳は、中国は、ぼくら日本を構うこと無く劇的に変容し続ける。
そうだとするなら、早くこの波に乗っかってしまうことこそがよい。
のちの学習に投じる時間やお金、なによりそれを捻出しようとする人間の精神力を消耗させるよりも、いまするりと深圳を訪れて、感じる衝撃をしっかりと心の中にきざみこんだらいい。

そんなふうに思うのだ。

Maker Faire ShenZhenでの私達の展示の様子

以下は参考まで。

高須さんの書かれた深圳のものづくり事情に関する書籍。

メイカーズのエコシステム 新しいモノづくりがとまらない。

日本人として深圳で工場を立ち上げて日中の間でものづくりの架け橋をされている藤岡淳一さんの書籍もおすすめしたい。

「ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ−これからの製造のトレンドとエコシステム

中国の決済事情の劇的な進展に関するレポートとしては「未来を変えるプロジェクト」の記事も大変おすすめだ。

中国のあまりの変化に、驚きを隠せない〜世界が注目する中国の決済革命〜