この記事は「DevHR Advent Calendar 2025」の8日目になります。
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3年ぶりにこのブログを書くことにした。
この3年の間、私は企業の勤め人として、採用(中途、新卒など)を中心に人事業務に取り組んでいた。
その経験を踏まえて、ひとつの問いについて考えたい。
問いは「中途採用はゼロサムゲームか?」というものだ。
なぜこんな問いを思いついたのかというと、中途の採用活動に明け暮れる中で、ある会社から別の会社に人を引っ張ってきているだけで、社会全体としてみたときに「正味の価値」を生んでいないのではないか?という疑問をふと抱いてしまった、とそういうことである。
この問いを正面から受け止めて、自分の仕事の「正味の価値」を考えることが少し難しく思ってしまった。
問いについて、私ひとりで考えるより生成AIの力を使ったほうが議論の質が確実に高くなると思うので、まずは私の問いを生成AIに投げた結果を共有したい。
ということで、GeminiとChatGPTにおなじ問いを投げた。以下の問いである。
中途採用はゼロサムゲームでしかないのではないのか問題についてどう思うか。つまり私の会社Aが、会社BにいるXさんを採用成功するとBはXさんの代わりを採用しなくてはならず、また別の会社の人を採用しようとする。そこで生まれているのは採用媒体やエージェントフィーに流れるお金だったり、採用の人件費だったりするが、なにか総和として価値は生まれているのか?という問い。
さて、生成AIの回答をガバッと貼られても読者の方の読む気を削ぐと思うので、2つの生成AIの回答をさらに端的にGeminiにまとめてもらったものだけを一旦ここに貼る(内容無編集の回答は参考までに、本記事の最後に貼ります)。
【Gemini】
両AIは、「局所的な人材の奪い合い(A社がB社から引き抜く瞬間)」だけを見るとゼロサムだが、「労働市場全体」で見ると、適材適所による生産性の向上と経済の新陳代謝という明確な価値を生んでおり、これは非ゼロサム(ポジティブサム)であると結論づけています。
ただし、採用にかかる手数料(摩擦コスト)が、その生み出される価値を上回ってしまう場合は、価値が生まれない問題があるという点も共通して指摘しています。
おおお…さすが2025年末にもなると、生成AIの進歩は恐ろしいもので、私が多分独力で3日考えても出せない納得感を3分で出力してしまった…。そうね、まぁ、これでいいと思う。問の答えは出ました、中途採用はちゃんと価値を生み出しているらしいので、私も自分の仕事に胸を張って、枕を高くして寝ます!
…となれるほど私は素直ではなかった。摩擦コストの問題は結構大きいなと思う。
これは単に、「エージェント経由の採用はフィーがかかる(たとえば35%とか40%とか)から、それをやめてリファラルやWantedly、YOUTRUSTなどの媒体費が抑えられる経路で採用しましょう!」ということではないと思う。採用というプロセスにかかるあらゆるコストを念頭に入れるべきではないか。
とはいいながら、これに対するきれいな回答は、残念ながら私は持ち合わせていない。し、それはAIに聞いた所でしょうがない。いろんなものが積み重なった、企業活動そして社会の経済活動全体に起因するものだから。そして、それは「悪い」と言い切れるものではないように思う。複雑性を棚上げして、善悪でなにか決められるほど世の中はすっきりとはできていない。
私は今日も採用媒体を開いて、自社の求める候補者像を念頭にたくさんの登録者データを眺めて、合うかもしれないと感じる人にスカウトを送る仕事を続けている。
それが社会に価値を生む仕事なのか、付随して発生するコストに飲み込まれる無駄な仕事なのか、この瞬間には分からない。
でもそれが前者である確率が高くなることを少しでも願って、考えて、仕事をするしかないのだろう。
※画像はNano Banana Proに適当に作ってもらいました。
